配属と育成
2026.11.05 公開
読了 3分
「見て覚えろ」で伸びる人と、
伸びない人
見て覚えさせる育て方は、うまくいく現場と止まる現場がはっきり分かれます。分かれ目は本人の飲み込みの早さではありません。何が言葉にされていて、何がされていないか。その切り分け方を書きます。
伸びた人は、見る前に基準を持っている
同じ先輩に同じ時間つけても、育ち方は割れます。割れた理由を本人の資質に置くと、打つ手がなくなります。見るべきは、観察の前に基準が渡っていたかどうかです。基準とは「何を良しとするか」の一文です。これを持っている人は、先輩の動きから必要な部分だけ拾えます。持っていない人は、服装も口癖も手順も同じ重さで写します。
競技の練習を思い出すと分かりやすい話です。上級者の動きを真似られるのは、良い動きの条件を先に教わっているからです。条件なしに映像だけ見ても、再現にはつながりません。職場でも同じ構造が起きています。
言語化されていないものを三つに分ける
「見て覚えろ」が機能しない現場では、伝わっていない中身が混ざっています。まず三つに分けます。
01
手順
どの順番で何をするか。これは最も言葉にしやすく、書けば終わる。書かれていないなら、育成の問題ではなく整備の問題。
02
判断
例外が出たときに何を優先するか。先輩の頭の中にあり、本人からは見えない。聞かれないと出てこない。
03
勘所
相手の声色や沈黙から次を読む部分。完全には書けない。だから観察と同行に時間を使う価値がある。
手順と判断を書かないまま「見て覚えろ」と言うと、本来は観察に使うべき時間が手順の推測に消えます。見て覚えさせていいのは勘所だけです。
二つのやり方を並べて選ぶ
同行中心にするか、手順書中心にするか。どちらが正しいかではなく、仕事の性質で決めます。迷ったときは次の表で当てはめてください。
No
こういう仕事
向いている渡し方
01
手順が毎回ほぼ同じ
先に書いて渡す。同行は確認だけに短く使う
02
相手ごとに正解が変わる
同行を厚く。ただし観察の視点を事前に一つ指定する
03
失敗の影響が大きい
判断基準を文章にしてから現場に出す
04
教える側の人数が少ない
手順を書いて配り、同行は週一回に絞る
観察に視点を一つ付ける
同行を指示するとき、「よく見ておいて」で送り出すと差が出ます。見る対象を一つ決めてから同席させると、新人の報告が具体に変わります。終わったあとに聞く言葉も変えます。
Before
今日の同行、何か気づいたことある?
After
今日の商談で、先輩が質問から提案に切り替えた場面はどこだった?そのとき何が決め手だったと思う?
後者なら、答えがずれていてもずれ方が見えます。ずれ方が見えれば、次に何を言葉にすべきかが分かります。これが育成の進み方です。
伸びない原因を本人に戻さない
現場で出てくる言葉を、別の問いに置き換えます。評価の言葉のままでは、次の手が出ません。
- 「要領が悪い」→ 手順のどこで止まっているか、本人に順番を言わせたか
- 「応用が利かない」→ 例外時の優先順位を、誰かが口に出したことがあるか
- 「質問してこない」→ 質問していい時間帯と相手を決めたか
- 「同じ失敗を繰り返す」→ 失敗の判定基準を、本人と同じ言葉で共有できているか
よくある間違い
「自分で考えさせる」と「何も渡さない」を同じ扱いにすること。考えさせるには材料がいります。基準を渡したうえで判断させるのが前者、基準ごと渡さないのが後者です。
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明日からできる確認
大がかりな仕組みは要りません。今週のうちに次を試せます。
- 新人に、担当業務の手順を口頭で最後まで言ってもらう。詰まった箇所が未整備の箇所
- 教える側に、例外が起きたときの優先順位を三つ書き出してもらう
- 同行の前に、見る対象を一つだけ指定する
- 同行後の質問を、場面を指定した形に変える
これらを回すと、「見て覚えろ」で伸びる人と伸びない人の線が、本人の側ではなく渡し方の側に引かれていたと分かります。線を引き直すのは、受け入れる側の仕事です。
就活・転職グランドスラム編集部
最終更新 2026.11.05
